自動販売機大国の日本は過去の話?ここ10年で約30%減少していた!?

日本は、海外から見ても自動販売機大国と呼ばれるほど自動販売機の台数は多いです。もちろん米国の台数には遠く及びませんが1人当たりの台数では世界一の多さなのです。

しかし、今日の自動販売機の台数は実は過去10年で約30%ほど減少しているのです、その要因とは何か?をひも解いていきます。

自動販売機の台数は400万台

最新の自動販売機の台数データですと、現在400万台の自動販売機が日本に設置されています(2021年12月末時点)、これは日本の人口比で言うと約30人に1台の自動販売機の設置台数という驚異的な数値になってます。

しかし、400万台という驚異的な設置数である自動販売機ですが、実はここ10年で100万台以上も減少しているのです。

衰退している?日本の自動販売機

こちらは2010年からの自動販売機の普及台数を示したものです。実にここ10年で120万台ほど減少しているのです。

2021年時点での、日本自動販売機システム機械工業会の概況によると、下記の要因があげられていました。

飲料自販機:コロナ化による需要の鈍化

飲料自販機は全体の約56.3%を占めていて、前年より1.3%減少した。

主な要因が夏場の長雨とコロナ渦による需要の回復遅れにより飲料メーカーや機械の運営業者の投資控えによるものとしている。

確かに自動販売機においては天候はもちろんの事、人の入出に左右されるビジネスのためコロナによる在宅推進や外出控えムードなどの影響を引きずっているという要因は納得できる。

自動サービス機:導入が一巡した事・利用客の減少

自動サービス機は全体の約32.4%を占めており、飲料自販機について構成が高い種別である。こちらは前年より0.2%減少した。

主な要因は、ロッカーや自動精算機の導入が一巡したことにより需要が落ち着いたこと、またGotoトラベル事業の一時停止や東京オリンピック・パラリンピックでのコロナ規制によりインバウンド需要が見込めず、利用客が減少したこととしている。

自動サービス機の中でも約7割がコインロッカーなどの機器であり、記載の通りコロナによるインバウンド需要が見込めなかったという要因があった可能性は否定できない

以上が、日本自動販売機システム機械工業会の現況によるものでした。

では長期的に台数が減少している要因は何でしょうか?

<考察>長期的に自動販売機が減っている要因

まず現在確認できる指標上、一番自動販売機が520万台と多かった2010年の普及状況を見てみます。

内訳のほとんどが、飲料自動販売機・自動サービス機・たばこ自販機・その他サービス自販機で占めており全体で97.8%あるため、この4種別に対して2022年までの動向を見ていきます。

単位:万(台)

まず、10年で自動販売機が減少してしまった最大要因は、科目でいうと「その他自販機」が67万台減・次にたばこ自販機が25万台減少、清涼飲料水が18万台減少となり、この3科目で減少台数の約8割以上を占めます。

ただし、その他自販機については2017年度台数が急下降しているのは単純に全て減ったわけではなく、その他分類から自動サービス機分類に一部科目変更があったのも要因としてあります。しかし、自動サービス機が科目変更で増加した台数は多く見積もっても13万台程度であることから、その他自販機による減少要因が全体の自動販売機の普及台数を下げている一番の要因であることには変わりはないでしょう。

ではもう少し1つ1つの要因を深堀していきます。

その他自販機の普及の減少要因

出典:山田屋 テレカの自動販売機

その他自販機においては、内訳が「新聞紙・雑誌」「かみそり・靴下」「生理・産制用品」「乾電池・玩具・カード類」・「切手・はがき・証紙」でした。内、2010年時点では「乾電池・玩具・カード類」が72万台ということで、その他自販機の構成の82%を占めていました

ちなみにカード類とは、主にテレカ(テレフォンカード)の自販機が多くを占めていたのではと思います。

そして、2010から2021年でおよそ67万台(76.7%減)となっています。

上述したとおり、2017年にその他から自動サービス機に科目変更があったことを考慮して減少台数を少なく見積もっても54万台はこの10年で消えたと思われます。

その理由は、「公衆電話が使われなくなったこと」がやはり一番の要因だと思います。

こちらは公衆電話の設置台数と通信回数の推移です。グラフは2021年のデータがないため令和2年(2020年)のものと平成22年(2010年)で比較してみます。

2010年・・・・設置台数 約25万台 通信回数 約2~3億回

2020年・・・・設置台数 約19万台 通信回数 約0.5億回未満

という事がわかります。

今回の趣旨として、その他自販機で一番構成の高い「カード類」(テレフォンカード)との相関があるかを見たいので通信回数の減少率で比較します。

公衆電話の通信回数は2010年から2020年でおよそ98%も減少しています、そのためその他自販機の「カード類」を占めるものが「テレカ」であると仮定した場合、公衆電話の利用者の減少に伴いテレカも使われなくなり、テレカを販売する自販機も大きく減少したというのは相関があると言えます。

たばこ自販機の減少要因

次に2番目に減少構成比の多かった「たばこ自販機」がなぜ減ったかですが、おそらく2008年に導入された成人識別カード「タスポ」とコンビニの普及等の複合的な要因だと思われます。

今現在、ますます見かけなくなりましたが、たばこを自販機で購入する場合「taspo(タスポ)」という成人認識ICカードを発行しないと購入することができません。この法案は2008年7月から全国のたばこ自動販売機で導入が開始されました。

やはりカード発行義務化当初は、非常に反対の声も多くありましたし、カード発行するのがめんどくさいという声も多かったです。また2008年から全国のコンビニ店舗数も急速に増えていることから、わざわざ自動販売機で買わずにコンビニ等で購入する消費者が増えたものだと思います。

*ちなみにtaspoのサービスも2026年に終了します。今後マイナンバーカードなどを使って購入する方法に変わるとの事です。

今後の自動販売機の生末は

さて、いかがでしたでしょうか?

結論として自動販売機の台数は減っている事は事実ですが、その多くは一般的な飲料自販機よりもカード類自販機やたばこ自販機の減少が主要な要因でした。

ただ、全体として普及台数が減っている事は事実で、それはコンビニの増加や私たちのライフスタイルの変化によって自動販売機全体として減少傾向にあることは間違いないです。

現在、少しずつスマート自販機というものも登場するにあたって、自動販売機業界を取り巻くビジネスモデルも変化していく事になっていくと思われ、今後の動向に注目したいです。

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