コナン君が使用する「腕時計型麻酔銃」の法的問題点とは?

「腕時計型麻酔銃」とは、漫画やアニメで人気のある作品「名探偵コナン」に登場する小道具のひとつであり、腕時計の形をしており、麻酔銃として機能します。コナン君がこの銃を使用して、事件の解決に役立っている様子は、多くの人々の想像力を刺激し、大変人気があります。

しかし、実際には、「腕時計型麻酔銃」は法的問題点を抱えており、使用することが犯罪になる可能性があるということが指摘されています。この記事では、「腕時計型麻酔銃」に関する法的問題点を解説します。

画像出典: 名探偵コナン公式サイト

銃刀法違反に該当するかの是非

まず、銃刀法に該当する定義の確認をしてみましょう。

銃刀法については、銃砲刀剣類所持等取締法により定義されており下記のように記されています。

第一章 総則

(趣旨)

第一条 この法律は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防上必要な規制について定めるものとする。

(定義)

第二条 この法律において「銃砲」とは、拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。

 この法律において「刀剣類」とは、刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣、あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつて峰の先端部が丸みを帯び、かつ、峰の上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。

出典:e-GOV 法令検索

今回の争点としては「腕時計型麻酔銃」が銃刀法の定める「鉄砲」または「刀剣類等」に該当するかという事になります。

第2条によると鉄砲とは『拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして』とされており、腕時計型麻酔銃はこの定義の鉄砲には該当しないと思われます。

また「刀剣類」の定義も『刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣、あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつて峰の先端部が丸みを帯び、かつ、峰の上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)』という事ですので、非該当となります。

つまり、コナン君の腕時計麻酔銃は銃刀法違反には該当しないものと考えられます。

*筆者は法律家ではありませんので、この解釈の成否については保証致しかねます。

傷害罪・暴行罪に該当するかの是非

次に傷害罪・暴行罪の定義を見ていきます。

刑法第204条 傷害罪

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第208条 暴行罪

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

このことから、麻酔銃を使用することで怪我が生じるか否で傷害罪か暴行罪が分かれるところです。

名探偵コナンの腕時計麻酔銃を人に向けて射出する描写をいくつか見るに、対象者が怪我をしている描写を見たことは無い・怪我を負った様子も見られないため傷害罪には該当しませんが、暴行罪が成立する可能性があると言えます。

しかし、朗報です。

江戸川コナン君については、6歳~7歳の年齢として設定されています。

そのため下記の条文によりコナン君は傷害罪としての刑罰を受ける事はありません

刑法第41条

14歳に満たない者の行為は、罰しない。

そのため、刑事罰は受けずに済みました。その代わりに少年法が適応されます。

第一章 総則

(この法律の目的)

第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。

 この法律において「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。

第二章 少年の保護事件

第一節 通則

(審判に付すべき少年)

第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。

 罪を犯した少年

 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年

 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年

 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。

 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。

 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。

 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。

そのため、少年法により家庭裁判所で審判を受けることになりますが、コナン君は事件解決という目的のためにやむなく麻酔銃を射出しているため保護観察を科される程度でしょう。

*筆者は法律家ではありませんので、この解釈の成否については保証致しかねます。

麻薬取締法違反に該当するかの是非

最後に麻酔銃の「麻酔薬」についてですが、漫画の描画を見るに麻酔針を首元に射出して直後に対象を眠りに落とせる事・推理中のある程度の時間においても効果が持続することから「ケタミン」を使用していると仮定します。

ケタミン(英語: Ketamine)は、アリルシクロヘキシルアミン系の解離性麻酔薬である。日本では麻酔薬のケタラール(第一三共)として静脈注射剤と筋肉注射剤がある。医薬品医療機器等法における 処方箋医薬品・劇薬。解離性麻酔薬であるため他の一般的な麻酔薬と比較し、低用量帯では呼吸を抑制しない大きな利点がある(呼吸停止しにくい)。ケタミンは世界保健機関(WHO)による必須医薬品の一覧に加えられている。フェンサイクリジン(PCP)の代用物として合成された[3]。筋肉注射が可能なので、動物の麻酔にもよく使われる。

出典:wikipedia – ケタミン

またケタミンにおいては麻薬に認定されているため、麻薬及び向精薬取締法に該当します。

コナン君においてはまだ小学生という事で医師免許を取得する条件を満たしておらず、無免許での麻薬の所持・使用をしているという事になります。そのため麻薬取締法違反となり10年以下または7年以下の懲役となります。

しかしながら、同様に14歳未満であることから刑事責任能力がないため、少年法に基づき処罰されます。今回争点としては事件解決のために必ず麻酔薬を使用しなければならなかったか?というところです。

まず、江戸川コナン君はなぜ小五郎のおじさんに麻酔薬を射出し続けなければいけないかというと黒の組織から逃れるために自身の推理力の公に披露できないという自身の命の保身のためという一見正当な理由があります。しかしながら、小五郎のおじさんを事件の度に麻酔薬を射出しまくり薬漬けにすることも褒められたものではありません。

以上のことから、自身の保身のためという理由はあるにせよ再犯性が高い行為を行っているため少年法でも児童自立支援施設等への送致もしくは少年院送致の事案ではないかと思われます。しかし漫画を見るにそういった描写もありませんので、日頃の事件解決の貸しがある警察と密約を交わしている可能性があると考えるべきでしょう。

*筆者は法律家ではありませんので、この解釈の成否については保証致しかねます。

まとめ

以上、まとめとして江戸川コナン君が使用する腕時計型麻酔銃において下記の刑事上法律違反の可能性がある

・暴行罪

・麻薬取締法違反

しかし、小学生である事により刑事責任をとらなくていい事・また警察と日頃から太いパイプでつながっていることでこれらの違法行為は目をつむってもらっていると思われる。

気をつけたいのは、私たちが現実で腕時計型麻酔銃を使用すると立派な犯罪となるので、アニメはフィクションという事を改めて認識頂き、こういった行為を行わないように注意しましょう

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