CMに隠された心理的効果とは?解説と事例

CM制作・放映には多額の費用がかかります。有名タレントを起用するだけでも製作費は数千万を超え、主要キー局で1回数十秒のCMを流すのに100万近くかかります。

ではなぜ、企業はここまでコストをかけてCMを制作・放映しているかというとそれだけ消費者に対しての効果が高いからなのです。

CMにおいては、人々の心理的状態に影響を与える効果があります。本記事では、CMにおける心理的効果として、ザイアンス効果、モデリング理論、プラシーボ効果、バーナム効果とその心理的影響について解説します。

繰り返す事で好感度が高まる「ザイアンス効果」

ザイアンス効果(単純接触効果)とは、最初は興味がなかったものでも何度も見たり、聞いたりすることで好感度が上がるという効果です。

例えば営業活動でも単純接触効果により同じお客様との会う回数が増えることで好感を持ちやすくなるのは有名な話です。

CMにおいてもこの効果は意識されており、ある商品の広告を一定回数見る・聞くことにより好感を持ってもらい購入してもらいやすくなるという心理的効果を利用しています。

ただし、このザイアンス効果は研究結果により10回からは効果が低減してしまうこと、また接触対象に対して嫌悪感を一度でも抱くとこの効果は逆効果となることもあります。

実例として、一般的なCMはこの理論が根幹にあります。

他者の行動も自分に取り入れる「モデリング理論」

次に、モデリング理論とは、他者の行動を観察することで、その行動を自分自身の行動に取り入れることができるという理論です。

つまり、CMにおいては、他者が商品やサービスを使用している姿をCMで表現することで、視聴者がその商品やサービスを購入するという行動をとるように誘導することができます。例えば、人気のスポーツ選手がCMに出演し、その選手が使用している商品やサービスを紹介することで、その商品やサービスを購入する人が増えることがあります。

実例として下記のCMなどがこの理論を取り入れています。

このCMのペルソナは、20代~30代のスポーツや運動をしている男性だと想定されます。

まずこのCMは素振りをしている大谷選手が流れます。そして最後に大谷選手に並んでバンテリンの商品写真が一緒に写るわけですがあなたの脳内では「過酷な練習をしている大谷選手はバンテリンを使っている」「大谷選手のように成功するための支えはバンテリン」「スポーツや運動での腰痛にはバンテリン」というニューロンネットワークが形成され、さらにあなたが大谷選手に憧れをもっているのであればよりこの商品は魅力的だと「あなたの脳内」は判断するでしょう。

また芸能人が不祥事を起こした場合、その芸能人が写っているCM放映は中断されるのが一般的です。確かにイメージは悪いが商品とは何の関係もないんじゃないのと思われる方もいるかもしれません。しかし、ネガティブなイメージの対象がその商品と映ることでマイナスのミラーリング理論により「あなたの脳内」はこの商品を買うべきではないという負のイメージを持つためです。

本当は効果が無いのに効果を実感する「プラシーボ効果」

プラシーボ効果とは、実際には何の効果もない治療や薬物を使用した場合に、被験者がその治療や薬物の効果を実感する現象です。

つまり、人々が自分に対して良い影響があると信じることで、実際にその影響が現れることがあるということです。CMにおいては、商品やサービスを紹介する際に、その商品やサービスが持つ良い効果を強調することで、消費者がその効果を実感するように誘導することができます。その結果、消費者が商品やサービスを購入することがあります。

下記のCMが実例です。

医薬品のCMなどでは薬機法により、「この薬で治ります」「この薬で身体が復活」などという過大表現は禁止されています。(出典:厚生労働省 医薬品等の広告規制について)

そこでプラシーボ効果を使います。

該当CMでは、喉に違和感を感じ娘にうつさないように席を離れるママと心配そうに見る娘の姿があります。その後、イメージ映像でこの薬が喉の炎症を修復・直すような映像が流れます。カットが変わり、元気なママとそれを見て嬉しがる娘の姿が最後にうつるわけです。

この一連の流れにより、特にこの薬が風邪や咳を治す効果はないが「喉や風邪に良い影響がありそうな薬」という印象を視聴者に与え、その印象の状態で薬を服用することでさらにプラシーボ効果により身体の炎症がより早く回復するというW効果もあるわけです。

なるほどパブロンゴールドWのWとはそういう事だったのか。。。(←個人の感想です)

*ちなみにこの記事ではパブロンは効果が無いと言っているわけではありません。風邪薬というのは風邪を治すわけではなく、症状を抑える事しかできません。しかし症状緩和には個人的に効果があると思っており私もパブロンは常備しています。

自分に当てはまる事で共感する「バーナム効果」

バーナム効果とは、人々が自分に対して言われたことを信じる傾向があるという現象です。

つまり、CMにおいては、商品やサービスを紹介する際に、消費者が自分に当てはまるような表現を使うことで、消費者がその商品やサービスに共感し、購入する確率が高まることがあります。例えば、「あなたに必要なのは、この商品です」といった表現がバーナム効果を引き起こし、消費者がその商品を購入するように誘導することができます。

下記のCMが実例です。(web広告のため長編です)

このCMは昨今のコロナ過に学生生活を送った学生に向けてのカロリーメイトのCMです。

修学旅行にも行けず、

合宿にも行けず、

練習も制限された。

でも自分たちはコロナの無い中で過ごした学生時代が無いのではなく、

コロナ過で過ごした学生時代がある。

「あの頃に比べれば」と今後きっと力をくれるであろう学生時代は

自分達にとって誰よりも格別だ

というストーリー展開で、最後にカロリーメイトの写真と共にこんなメッセージが写ります。

「この世界で強くなる、すべての努力のそばに」

という事で、これはまさにバナーム効果を意識した作りのCMです。コロナ過で過ごした自分達のおかれた状況をストーリーで展開することで非常に強い共感とこの商品に対しての購入行動を増進させる効果を狙っています。

まとめ CMの心理的効果

以上、代表的なCMにおける心理効果を紹介しました。

CMにおいて消費者が商品やサービスを購入する決定をする際に、様々な心理的要因が影響を与えます。これらの要因には、認知的偏り、情動的な反応、社会的影響、自己認識、および自己決定などが含まれます。つまり、CMには、これらの心理的要因をうまく活用することで、消費者の心理的影響を増強することができます

こういった心理的効果・無意識への働きかけがCMの真理であり、わたしたちがCMを軽く流し見しているだけでもあなたの脳の中ではCM効果により様々な情報形成がされていき、何かしら購買機会での意思決定に影響を確実に及ぼしているのです。

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